Signal

1. Kisses 2. 遊びにきてね 3. マイティ・スマイル 4. 1/2の永遠 5. Bronze 6. 氷のヴィジョン 7. 空の日 8. セパレイト・ブルー 9. GIMMICK 10. 風の鏡

　またまた、前作とは打って変わったサウンドで、軽快そのものである．聴いていて実に心地良いのだが、こうしてレビューとしてまとめてみると、アルバム毎にホントにばらばらで一貫性が無い！ＰＳＹ・Ｓってやっぱりよく分からない．それをずっと聴いているおいらも何だかな．
　それはさておき、"Different View"のところでもちょっと書いたけど、本作品はCDで発表されているのだが、実は一旦出来上がったマスターテープをアナログに落とし（所謂ラッカー盤とゆー奴だ）、それから再びCDに落とすとゆー実にひねくれた手法が取られている．何でも当時の松浦雅也はデジタルな音に飽きが来ていたらしく、また個人的にもアナログの音が好きだとゆーことと、Sonyの工場からアナログレコードを作成するカッティングマシン（ってゆーんだっけ？）が姿を消すことからこの手法が取られたようだ．その甲斐あってか音質が素晴らしく、実にナチュラルで温かみのあるサウンドが鳴り響く．また、一般家庭で聴かれることを想定して何度も何度もミックスをやり直したそうである．当然と言えば当然なのだが、ヘッドフォンで聴く音とスピーカーを通した音の印象が全然違うし、自分の部屋で鳴らした音と他人の家で鳴らした音が全然違っていて、一瞬「あれっ？」と思ったりしたことが印象に残っている．音質に関しては文句無し！松浦雅也の我侭なこのこだわりに感服する．
　随分と前置きが長くなってしまったが、一曲目の"Kisses"はスネア系のリズムが軽快なアップナンバーである．ライブで聴くと実に踊りにくい不思議なリズムの曲である．一緒にライブに行った友人がこの曲を聴いて「難しいノリだね」と言ってたなぁ．そうそう、この曲に関してはもう１つ言っておかなければならないことがある．それは「シングルを聴いてみて」ってこと．『RSS（ローランド・サウンド・スペース）プロセッサーによる３次元超立体サウンド実現』（ジャケット引用）がなされている．間奏の部分だけだけど、このシステムが取られていて音があちこちに飛ぶ！別にパンニングで音を左右にふったりしているわけじゃないから凄いと思う．この手法はビデオの"Music In Your Eyes"や"Emotional Engine"でも行っていて今でこそどってことのないサウンドかも知れない．しかし、1990年当時としては画期的な音だったのではないかと思う．
　続く"遊びにきてね"は縦ノリのアップナンバーである．松浦雅也得意の大胆なストリングス・サウンドに加え、新井昭乃と前田康美によるClackersのコーラスが冴え渡る．続く"マイティ・スマイル"はアメリカン・ロック調のギターを全面に押し出した曲である．この曲は今イチおいらの好みではないけど、晴れた日にドライブしながら聴くといいやね．お次は"1/2の永遠"だ．軽快に飛ばす、飛ばす、ちょっと飛ばしすぎじゃない？ってゆー位に流れて行く．この曲もチープなサウンドにしてロック色を全面に押し出している．ベースラインがカッコいいし、横で鳴ってるカッティング・ギター（？）もイケる！続く"Bronze"はハウス調の曲である．ＰＳＹ・Ｓとしては初のハウス調である．以後のアルバムでもハウス調の曲が何曲か発表されているが、これが一番好きかな．何より詩が良い！それを淡々と無機的に歌い上げるCHAKAのヴォーカルもまた良い．
　もともと、おいらはユーロやハウスは嫌いなのだが、"Kisses"や"Bronze"は別に嫌いじゃなく、むしろ好きな位だ．何も考えていないあの本家の方達のサウンドが嫌いなだけだね．
　続く６曲目は"氷のヴィジョン"である．何か妙な迫力がある．これを聴くと何故か「完成」だとか、「最後」という言葉を連想してしまう．そーいや、"Signal Victory"ツアーのときの最後の曲がこの曲だったような．ライブじゃこの曲のドラムにエレクトリック・ドラムを使ってたっけな．本作品中のオリジナルよりライブのときの方が印象に残ってるなぁ．お次は"空の日"である．７曲目にしてやっとバラードである．曲の美しさやギターの音色の美しさもさることながら、CHAKAとClackersのコーラスが何より心地良い．よくCHAKAがおっしゃっておられます．「私がコーラスに入ることでメインヴォーカルが数倍にも良くなるなら、私は全身全霊をかけてコーラスをやります」と．Clackersの御二方もきっとそーゆー気持ちだったことでしょう．続く"セパレイト・ブルー"は名曲の誉れ高い曲である．この曲もまた詩が良い！バイオリンの音色が哀愁を誘っており美しい曲である．元気が出てくるよね．
　続く"GIMMICK"は一転して激しい縦ノリのサウンドである．KARAKのガリホさんがギターを弾きまくる！まるでハードロック並みの激しさだ．そしてラストが名曲"風の鏡"．チェロの音色が実に素晴らしく、またCHAKAの優しいヴォーカルがやすらぎを与えてくれる．この曲を聴いて何度泣かせられたことか．ＰＳＹ・Ｓのバラードの最高傑作であると断言してしまおう．
　６枚目に当たる本作品は、ＬＩＶＥ　ＰＳＹ・Ｓのメンバーを全面的にフューチャーしており、基本的にバンドサウンドである．これは今までのＰＳＹ・Ｓには無かったことであり、本作品を聴くまでは「だいじょぶなの？」と不安に思ったものだけど、そんな心配は全くの杞憂であった．地味な前作"atlas"とは対極的な作品と言っても過言ではなく、少々ポップになりすぎの気がしないでもない．遂に「松浦も売れ線に走ったかぁ」なんて思ったりもしたけど、楽しければそれはそれで良いじゃん！ただ、ＰＳＹ・Ｓを知らない人が一番最初に本作品を聴いては欲しくないのだが．